私は東京医科歯科大学の歯周病専門外来にて、難症例を含む幅広い治療の研鑽を積み、その後は都内歯科医院にてお子さんからご高齢の方まで多くの患者様のお口の健康づくりをサポートしてまいりました。
患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせて、あらゆる治療の選択肢をご提案し、心から納得していただける治療法をお選びいただけます。神保町ミセ歯科・矯正歯科は、患者様との信頼関係を大切に築きながら、ドクター・スタッフともに一丸となって、あなたの健康を末長く支えてまいります。

昨今、大人でも矯正治療をする方が増えています。自分もやりたいと思うものの、歯周病があるために「できるのだろうか?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。
基本的に歯周病だからといって矯正治療を受けられないことはありません。しかし、リスクもあるため、すぐには治療を開始できないケースもあります。
本記事では、歯周病と矯正治療の関係について解説します。矯正治療を希望するものの、歯周病を指摘されて心配な方は、ぜひ参考にしてください。
歯周病とは?

歯周病とは、歯と歯ぐきの間で繁殖した細菌に感染して、歯ぐきが炎症を起こす疾患です。進行すると、歯ぐきの奥まで炎症が達して、血や膿みが出る歯槽膿漏になったり、歯を支える骨(歯槽骨・しそうこつ)まで溶けて歯が抜けてしまったりすることもあります。 また、歯周病は、日本人が歯を失う原因となる疾患の第1位です。2018年に公益財団法人8020推進財団が実施した調査結果によると、歯周病を理由に歯を失った人の割合は、歯を失った人全体の37.1%と4割近くを占め、この割合は虫歯よりも多くなっています。
歯周病の原因
歯周病の主な原因としては、以下の3つが挙げられます。
- 歯垢(プラーク)の蓄積
- 口腔内の環境が悪い
- 生活習慣
この中でも最大の原因といえるのは歯垢の蓄積です。歯垢とは食べかすや細菌の塊です。きちんとケアをしなければ、歯と歯ぐきの間にある歯周ポケットと呼ばれる箇所にたまっていきます。そのうち歯ぐきに細菌が感染し、炎症を引き起こします。つまり、歯垢は歯周病の直接的な原因といえるのです。
また、歯周病には口腔内の環境や生活習慣など間接的な原因もあります。
歯磨きを怠ったり、甘い食べ物などを過剰に摂取したりすると、細菌が増殖しやすくなります。また、喫煙、アルコールやカフェインの過剰摂取といった生活習慣も唾液分泌量の減少を引き起こすために細菌が増えやすく、歯周病を発症しやすくなるでしょう。
歯周病でも矯正治療ってできるの?

歯周病でも矯正治療は可能です。ただし、歯磨きが難しくなるなどの理由から症状が進行しやすくなるリスクもあり、すぐに矯正治療を始められないケースもあります。そのため、クリニックでは矯正治療の前に歯周病の検査を行い、問題がある場合は先に歯周病の対策をしてから開始します。
軽度な歯周病であれば矯正は可能
矯正治療を希望される患者さんの中にも、歯周病を発症されている方は多くいらっしゃいます。重症の場合は別ですが、軽い炎症が起こっている程度であれば治療を開始できます。歯周ポケットの深さが2〜3mm程度の状態を安定して維持できる状態であれば問題ありません。
ただし、矯正治療中は歯磨きが難しくなったり、口腔内の環境が悪くなりやすかったりするため、歯周病の症状が進行しやすい状態になります。普段よりも入念なケアが必要となるため注意しましょう。
軽度でなくても歯周病を治療すれば矯正は可能
歯周病が進行してしまった方の場合は、先に歯周病を治療する必要があります。歯周病が悪化した状態で無理に矯正治療を始めると、歯周病がさらに進行して歯槽膿漏にまで発展する可能性がある他、歯を支える骨などの組織に負担がかかり、歯が抜けてしまうリスクも高まるためです。そのため、まずは歯周病の治療を優先し、歯周組織の状態を改善します。
歯周ポケットの深さが4mm以上あるなら、歯石の除去などを行って歯周病菌を減少させ、歯周病の症状が落ち着いたことを確認してから矯正治療を開始します。
ただし、場合によっては通常の治療では間に合わないケースもあります。歯のグラつきが顕著であれば抜歯せざるをえず、空いたスペースを補うことも考慮した治療計画を立てなければなりません。外科処置による治療が必要なこともあり、通常よりも時間を要する大がかりな治療となるでしょう。
歯周病のまま矯正を受けるリスク

矯正治療は装置の装着によって歯並びを整える治療です。装置によってデメリットは異なりますが、普段よりも口腔環境が悪化しやすいという点で共通します。そのため、歯周病を抱えたまま矯正治療を開始してしまうと、症状が悪化しやすく、次のような問題が起こる可能性があります。
歯肉退縮
歯肉退縮(しにくたいしゅく)とは、歯周病菌によって歯周ポケットが深くなり、歯ぐきが下がってしまう症状です。そこに矯正治療によって強い力が加わると、さらに歯肉が下がりやすくなり、歯の根元が露出しやすくなります。歯と歯の間の隙間が大きくなり、さらに歯垢がたまりやすくなり、進行が加速するでしょう。
さらに歯肉退縮が進むと、根本の一番外側部分であるセメント質がはがれて、その内側の象牙質がむき出しになります。歯の神経に刺激が伝わりやすくなり、熱いものや冷たいものを口にするとしみるようになる知覚過敏を引き起こす可能性もあります。
歯が抜けてしまう
歯肉退縮がさらに進むと、歯周病菌が歯を支える骨まで溶かし始めます。やがて歯がグラグラするようになり、最悪の場合、抜け落ちてしまうでしょう。
特に矯正治療では歯に力を加えて動かすため、歯槽骨が弱っている状態ではその負担に耐えきれず、歯が抜けてしまう可能性が高まります。このようなリスクを防ぐためにも、矯正治療を始める前にしっかりと歯周病を治療し、歯や歯ぐきの健康を回復させることが不可欠なのです。
歯周病の治療法

歯周病の治療方法はその程度に応じて異なります。 軽度の場合は、以下のような施術を行うのが基本です。
- スケーリング:歯の表面や根本にたまった歯垢や歯石を専用の器械を用いて取り除く
- ルートプレーニング:スケーリングでは除去できない、歯周ポケットの奥や歯根の表面にたまった歯垢や歯石を除去する
自宅でのセルフケアも重要となるため、他にブラッシング指導を受けることもあるでしょう。これらの治療によって歯周ポケットの深さを、2〜3mm程度に安定して維持できればひとまず安心です。
しかし、重度の場合は、これらの基本治療では間に合いません。歯周ポケットが深すぎるために取りきれなかった歯垢や歯石を、歯ぐきを切開して除去したり、健康な歯ぐきを移植したりするなどの外科治療が必要になります。また、歯を支える骨が失われているのであれば、再生療法によって歯周組織を再生する場合もあります。
矯正治療は歯周病改善にも役立つ
矯正治療をすれば、歯並びやかみ合わせの改善が期待できますが、これは歯周病の改善や予防にも非常に効果的です。
まず、歯と歯の段差や重なりが解消されて歯並びが整うため、歯磨きがしやすくなります。歯垢がたまりにくくなるため、口腔内を良好な状態に保ちやすくなるでしょう。
さらに、正しいかみ合わせになることで、特定の歯や歯ぐきに過度な負担がかかる状態も解消できます。歯周組織へのダメージを軽減できるため、歯周病になったとしても進行しにくいでしょう。
ただし、前述のとおり、歯周病の症状が重度である場合は、矯正治療は行えません。先に歯周病の治療から始めることになります。
矯正治療中は特に歯周病に注意

主な矯正治療にはワイヤーブラケットによるものとマウスピースによる方法がありますが、どちらの場合でも、治療中の歯周病リスクはあります。
まず、ワイヤーブラケットによる矯正の場合、歯の表面に装置を付けるため、歯磨きが難しくなります。磨きにくい箇所が増え、食べかすや歯垢がたまりやすくなるため歯周病のリスクが通常よりも高くなります。
一方、マウスピース矯正であれば、取り外しができるため、歯磨きはいつも通りに行えます。しかし、マウスピースの洗浄が十分でなければ細菌が繁殖しやすくなりますし、装置を付けている時間が長く、自浄作用のある唾液にあまり触れられないために、細菌に感染しやすくもなります。歯周病の発症や進行リスクがないとはいえないため、注意が必要です。
矯正治療中の歯周病予防ポイント
矯正治療中は、歯周病のリスクが上がります。予防するためにも、次の3つのポイントを知っておきましょう。
- 適切な道具を使用して歯磨きをする
- 定期的にクリニックに通院し、クリーニングを受ける
- マウスピースなど取り外し可能な装置のケアを怠らない
特に歯の表面に固定するワイヤー矯正の場合、歯磨きが難しくなります。歯垢の蓄積を防ぐためにも、正しい方法で丁寧にブラッシングをすることはもちろん、歯間ブラシやワンタフトブラシ、フロスなど歯ブラシ以外の道具もうまく使ってケアしましょう。
また、矯正治療中に限らず、セルフケアには限界があります。自分では除去できない歯垢や歯石を取り除いてもらうためにも、定期的に通院し、クリーニングを受けるようにしましょう。
さらに、マウスピース矯正の場合は、装置を清潔に保つことが大切です。洗浄が不十分であれば細菌が繁殖し、歯周病リスクが高まります。普段のお手入れは水洗いだけでも十分ですが、汚れが目立つ場合は、歯ブラシで優しく洗いましょう。市販の洗浄剤を使用するのもおすすめです。
当院が選ばれる理由

当院には、歯周病・根幹治療・矯正歯科のプロフェッショナルである院長だけでなく、歯周病学会認定医、矯正歯科専門医も在籍しています。それぞれの専門医が連携をとりながら最適な形で治療を進めるため、患者様のさまざまなお悩みにお応えできます。患者様が納得されることを大切に、幅広い治療法をご提案しながら、進めさせて頂きますので、矯正治療や歯周病でお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。
また、当院には矯正担当医が常駐しております。診療日によって不在ということはありませんので、矯正治療中に万が一、急なトラブルが起こってもすぐに対応可能です。
まとめ
歯周病を発症していても、矯正治療は行えます。軽度である場合は、そのまま治療できますし、中等度以上の場合であっても、治療開始前に適切な処置を行えば可能です。
また、歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなるため、歯周病の改善や予防も期待できます。ただし、矯正治療中は、普段よりも歯周病リスクが高まるため、普段以上に適切なケアを丁寧に行うことが大切です。
「矯正治療をしたいけど、歯周病がある」と不安な方も、ぜひ専門医にご相談ください。歯周病に上手く対処しながら、理想の歯並びを手に入れられます。
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日付: 2025年4月29日 カテゴリ:ブログ